Michael マイケル
以下のように、テーマを 「人間マイケルをもっと見たかった」 に寄せて、ブログ記事風にまとめ直せます。
映画『Michael/マイケル』感想
最高の音楽体験。でも、人間マイケルをもっと見たかった
映画『Michael/マイケル』を鑑賞してきました。
結論から言うと、音楽映画としてはかなり楽しい作品でした。
マイケル・ジャクソンの名曲を映画館の大音響で浴びられるだけで、満足度はかなり高いです。
特にIMAXで観る価値は大きいと思います。
2時間近く、ほとんどマイケルの音楽が流れているような感覚で、ライブシーンの迫力もすごい。観客の歓声や会場の熱気まで伝わってきて、自分もライブ会場にいるような気分になりました。
『Thriller』や『Billie Jean』など、誰もが知る伝説的な楽曲を最高の環境で聴ける。それだけでも楽しい映画です。
ただ、観終わったあとに残ったのは、興奮だけではありませんでした。
もっと“人間マイケル”を見たかった。
これが、ファンとしての正直な感想です。
IMAXで観るマイケルは最高だった
まず、音楽体験としては文句なしです。
ライブシーンはもちろん、MVの再現、名曲誕生の瞬間、ステージでの立ち姿など、マイケルの代表的な場面が次々に登場します。
特に『Billie Jean』初披露の再現シーンは、個人的に一番テンションが上がりました。
あの曲を、あの場で初めて聴いた観客はどんな気持ちだったのか。
ムーンウォークを目撃した瞬間、どれほどの衝撃だったのか。
そんなことを想像するだけでワクワクします。
ただし、これは元の映像を知っているかどうかで、かなり印象が変わると思います。
『Billie Jean』初披露や『Thriller』のMVを事前にYouTubeなどで観ておくと、映画の再現シーンが何倍も楽しめます。逆に知らないまま観ると、「へえ、すごいね」で終わってしまう場面もあるかもしれません。
私自身、映画の前に昔のマイケル映像をかなり観直していたので、劇場ではかなり楽しめました。
序盤のジャクソン5時代は本当に良い
映画はジャクソン5時代から始まります。
幼いマイケルが、父ジョセフの厳しい支配のもとで才能を開花させていく。その序盤の描写はかなり良かったです。
特にモータウンでのレコーディングシーン。
10歳のマイケルが歌い出した瞬間、周囲の大人たちが息を呑む。プロデューサーのベリー・ゴーディが目を潤ませる。その場面で、こちらも思わず胸を打たれました。
「これは努力だけでは説明できない才能だ」と思わせる説得力がありました。
幼少期のマイケルを演じた子役の歌声も素晴らしく、この序盤だけで映画に引き込まれます。
ジャファー・ジャクソンはすごい。でも本人ではない
成長後のマイケルを演じるのは、マイケルの甥であるジャファー・ジャクソン。
体型、声、仕草、ステージ上の動き。
かなり研究しているのが伝わります。
映画デビューとは思えないほど頑張っていましたし、パフォーマンスも見応えがあります。
ただ、ファンとしては少し複雑でした。
血縁だからこそ、雰囲気はかなり近い。
声も似ている。
動きも似せている。
音楽もマイケル本人の音源に近い。
だからこそ、脳がこう判断してしまうのです。
「マイケルっぽい。でも、マイケル本人ではない」
似ていないなら、最初から伝記映画として割り切れます。
でも、かなり似ているからこそ、逆に本物との差が目立ってしまう。
マイケル本人のライブ映像を何度も観てきた人ほど、この違和感はあるかもしれません。
映画の中心は父ジョセフとの対立
本作の物語の軸は、マイケルと父ジョセフの関係です。
父ジョセフは、息子たちをスターへ押し上げた人物である一方、マイケルに深い傷を残した存在として描かれます。
幼い頃から厳しく管理され、暴力的に支配され、成功してからも家族ビジネスの中に縛られ続けるマイケル。
映画は、そこから彼が少しずつ父の支配を離れ、自分自身のアーティストとして立っていく物語になっています。
この方向性自体は分かりやすいです。
ただ、少し分かりやすすぎたとも感じました。
マイケルの苦悩を「父に傷つけられた少年」という一点に絞りすぎていて、人物像がやや単純化されていた印象です。
“孤独で愛がほしい少年”だけでマイケルを語れるのか
映画のマイケル像は、かなり整理されています。
父に傷つけられた少年。
愛を求め続けたスター。
孤独な天才。
音楽で世界を魅了した存在。
もちろん、それは間違っていないと思います。
でも、マイケル・ジャクソンという人は、それだけで語れるほど単純ではないはずです。
少年期を音楽産業に捧げたこと。
普通の子ども時代を奪われたこと。
ネバーランドを作るほど、失われた幼少期にこだわったこと。
世界を癒そうとした理想主義。
一方で、メディアや世間から消費され続けた苦しみ。
そういう複雑さが、映画では少し薄かったように感じました。
伝説としてのマイケルは描かれている。
でも、人間としてのマイケルは、まだ奥に隠れたままだった。
そんな印象です。
公開前から議論を呼んでいた理由
本作は、公開前から英語圏でも議論を呼んでいました。
それは当然だと思います。
マイケル・ジャクソンは、音楽史に残る偉大なスターであると同時に、多くの論争を抱えた人物でもあります。
映画が彼の光と影をどこまで描くのか。
才能だけを描くのか。
疑惑や晩年の問題にも踏み込むのか。
それとも、あえて避けるのか。
そこは多くの人が注目していたポイントでした。
本作は、キャリアの上昇期、スターとして完成していく時期に重点を置いています。そのため、晩年の問題や大きな疑惑については深く扱われません。
肯定的に見る人は、
「まずは音楽と才能に焦点を当てた作品」
と受け止めるでしょう。
一方で否定的な人は、
「人物の複雑さを避けているのではないか」
と感じると思います。
私の感想は、その中間です。
音楽映画としては楽しい。
でも、伝記映画としては踏み込み不足。
特に“人間マイケル”を見たい立場からすると、どうしても物足りなさが残りました。
「ウィ・アー・ザ・ワールド」がないのは惜しい
個人的に残念だったのは、「ウィ・アー・ザ・ワールド」のエピソードがないことです。
マイケルは、ただのスーパースターではありません。
音楽で世界を癒そうとした人でもありました。
その象徴が「ウィ・アー・ザ・ワールド」だったはずです。
父に傷つけられた子ども。
世界中から愛されたスター。
そして、世界に愛を返そうとしたアーティスト。
この三つが揃うと、マイケルという人物の輪郭はもっと深くなったと思います。
もちろん、権利や尺、出演者の再現など、映画化するには難しい要素が多かったのでしょう。
それでも、ここが入っていたら、映画全体の印象はかなり変わった気がします。
1988年で終わる物足りなさ
映画はBAD期で大きなクライマックスを迎えます。
音楽的には最高です。
ライブシーンも盛り上がります。
締めとしては派手です。
でも、物語としてはこう思ってしまいました。
「そこで終わるんかい」
マイケルの人生は、むしろここからさらに激しく揺れていきます。
『Smooth Criminal』、『Black or White』、『Jam』、ブカレスト公演、スーパーボウルのハーフタイムショー。
そして、メディアとの戦い、疑惑、裁判、孤独、晩年の苦悩。
1988年で終わるということは、マイケルの人生の最も複雑な部分に入る前で幕を下ろすということです。
だからこそ、成功譚としては気持ちよくても、伝記映画としては中途半端に感じました。
総評:音楽映画としては一流。伝記映画としては物足りない
映画『Michael/マイケル』は、音楽映画としてはとても楽しい作品です。
IMAXで観るマイケルの楽曲は本当に強い。
『Thriller』も『Billie Jean』も、映画館で浴びると改めて名曲だと痛感します。
MV再現やライブ再現も多く、マイケルの映像を知っている人ほど楽しめる作りです。
ただ、伝記映画としては、やはり物足りない。
マイケルの人間性が少し薄い。
家族との葛藤も消化不足。
父ジョセフの怖さや異常さも、もっと踏み込めた気がする。
そして晩年の光と影には入らない。
結果として、映画のマイケルは、
「孤独で愛を求めた天才」
という分かりやすい人物像に収まってしまったように見えました。
でも、本当のマイケル・ジャクソンは、もっと複雑で、もっと危うくて、もっと大きな存在だったはずです。
人間マイケルをもっと見たかった
この映画を観て、改めて思いました。
マイケル・ジャクソンの音楽は本当にすごい。
名曲の力は圧倒的です。
劇場で聴くだけで、心も体も動かされる。
でも同時に、本人の映像や歌声には、誰にも再現できない凄みがあることも痛感しました。
映画の一番の功績は、観客をもう一度マイケル本人の音源や映像へ送り返すことかもしれません。
観終わったあと、また本物のマイケルを聴きたくなる。
ライブ映像を観たくなる。
彼が何を抱えて、何を求め、何と戦っていたのかをもっと知りたくなる。
だからこそ、こう思います。
伝説のマイケルだけではなく、人間マイケルをもっと見たかった。
続編があるなら、今度こそ成功の裏側、孤独、矛盾、晩年の苦悩まで踏み込んでほしいです。
マイケル・ジャクソンという巨大な伝説の奥にいた、一人の人間をもっと見せてほしい。
それが、この映画を観終えた一番大きな感想でした。